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フィンランドのベーシックインカム社会実験、開始から半年。どうなった?

フィンランド
2017年1月1日に始まったフィンランドのベーシックインカム社会実験

YLE2017年7月26日の記事では、実際の対象者3名の様子が報じられているので、まとめてみました。
Six months on: Feedback on Finland’s basic income trial

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フィンランドの社会実験のベーシックインカムとは

期間は2年間、対象者は失業者2,000人、支給額は月額560ユーロ(非課税)

このベーシックインカムは、収入を得ても減額されないため、収入があったら減額されてしまう従来の社会保障と違って、労働意欲をそがないと考えられています。

また、従来の複雑な社会保障とは違って、ベーシックインカム1本であると制度がすっきりするという利点も想定されています。

対象者3名はベーシックインカムでどう変わった?

看護学生マリンの場合

看護学校の学生マリンは、夏の間、市で、看護学校を通じて得た仕事をしています。
依存症やメンタルヘルスに問題を抱える人々を対象としたソーシャルワーカーのような仕事です。

勉強はうまくいっていて、2月から個人のデイケアで働いています。

ベーシックインカムのおかげで、働きたいだけ働くことができています。

ベーシックインカムを受給していない他の看護学生たちは、奨学金や住宅手当を受給できなくなるといけないので、働きすぎないように気を付けています。

ベーシックインカムがもっと幅広く導入されたら、雇用率が上がると固く信じるようになりました。

精神疾患を患うミラ・ヤスカリの場合

春にパートナーと暮らすために引っ越し、新聞とチラシ配達のパートの仕事を始めました。

ベーシックインカムの対象者となったので、失業手当を減額される心配なく仕事をすることができるのです。

最初は仕事を楽しんでいたのですが、長くは続きませんでした。うつがあり、パニック障害にも悩まされるようになったからです。

試用期間中に病気休暇を取ったところ、解雇されてしまいました。

治療を受け、事務飲食製パン新たな仕事を探そうと計画しています。

すでに接客の資格に加えて2年間のビジネスの学位を持っていて、勉強を続けて製パン課程を修了しようかと考えています。

起業を目指すユハ・ヤルヴィネンの場合

かつて装飾窓枠製作会社を経営していたユハは、新たに立ち上げたい会社に関する税務当局からの返事待ちの状態です。

起業のアイデアがいくつかあり、再び納税者になりたいと熱望しているのです。

倒産した会社の税金に関して、税務当局ともめています。

フィンランドはあまりに官僚主義的で、起業が難しすぎると思っています。

インタビューが新聞に載った後、ついに政府から返事が来て、ユハビジネスに復帰しました。

フィンランドのベーシックインカム社会実験に対する批判

フィンランド人の研究者2名による、フィンランドのベーシックインカム社会実験に対する批判が、ニューヨークタイムズに掲載されました。内容は次の通りです。

対象者が少なすぎる

当初の計画よりも対象者の人数が著しく削られたために、科学的に意味のある結果が得られなくなってしまいました。

目的が限定的すぎる

フィンランドのベーシックインカム社会実験は、貧困者を解放することでも、不平等と戦うことでもなく、雇用促進なのです。

フィンランドのベーシックインカム社会実験に関する今後の予定

今回のフィンランドのベーシックインカム社会実験は、2018年12月31日に終わります。

YLEはそれまでの間、引き続きミラユハマリンの3人の様子を定期的に取材する予定です。

まとめ

3人ともベーシックインカムで元気を得て、前向きに頑張っている様子です。

精神疾患を患うミラは、病気に阻まれてすんなりいかなかったようですが、それでも前向きで、スキルを付けて働こうという計画を立てられるのは、無条件の金銭的バックアップあってこそだと思います。

しかし。

対象者が失業者に限られていて、人数も金額も少ないので、効果が見えにくくなりそうです。

フィンランドのベーシックインカム社会実験に対する批判が、「怠惰な人たちがより怠惰になってしまうから、ベーシックインカムはダメだ!」という内容かと思ったら違って、「不十分だ!」という内容だったので、びっくりしました。

9月25日のBUSINESS INSIDERの記事で、フィンランドの社会実験よりも大規模なベーシックインカム社会実験が紹介されています。

ベーシックインカムは天使か悪魔か? アメリカで史上最大の実験

シリコンバレーの有名なスタートアップインキュベーターであるY Combinatorは、同社が予定しているベーシックインカムの実験について詳細を明らかにした。
同社は3000人の参加者を2つの州から集め、彼らを2つのグループに分ける。最初のグループの1000人は、最大5年にわたって、月1000ドル(約11万円)を受け取る。2つめのグループの2000人、実験では「コントロール・グループ」と呼ぶ2000人は、月に50ドルを受け取る。
実験のゴールは、「無条件でお金を受け取った人のクオリティ・オブ・ライフと仕事へのモチベーションはどうなるのか?」というシンプルだが、悩ましい問題の答えを見出すこと。

こちらの方がフィンランドよりも大規模なので、社会実験として有意な結果が出そうです。

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