2017年の春は、『あなたのことはそれほど』、『リバース』、『小さな巨人』とそれぞれ全然雰囲気の違う3つのドラマを観たので、感想を記録してみます。
まずは『あなたのことはそれほど』から。
『あなたのことはそれほど』
不倫ものなのですが、軽いです。
トルストイの『アンナ・カレーニナ』とか、スタンダールの『赤と黒』とかと比べたら。普通比べないかもですが。
あらすじ
主人公の美都(みつ)は、「女の嫌なところを集めたような」20代後半の女性です。
かわいくて、きれいで、オシャレで、自分の欲望に忠実で欲張りです。
占いを信じて、占い師に「あなたは2番目に好きな人と結婚すれば幸せになれる」と言われて、実行します。
まじめで、稼ぎが良くて、インテリアセンス抜群で、料理が得意で、かっこいいけど、ちっともときめかない男性に愛されて結婚します。
一番好きな男性は、中学生時代の同級生。
偶然再会して、電光石火で不倫を始めます。
この男も既婚者で、実は妻子が一番大事で、美都のことは遊びです。
結局のところ、この不倫は双方の配偶者にバレて終わります。
みどころ
美都がとにかく超自己中心的で嫌な女なのですが、女優の波瑠さんが演じていて、とてもフェミニンで上品な見た目です。ボトムスの丈が常にひざ下。効果的な演出です。
私もあんな服着て毎日過ごしたいわ~。
美都の夫(涼太)は俳優の東出昌大さんが演じているので、背が高くてかっこいいのですが、愛する妻の不倫に気づいてからどんどん乱心していく演技がすばらしかったです。
目つきが危うく、笑顔が怪しく、ふとした仕草やそれにともなう表情が、ついにブチ切れるのかとハラハラさせてくれました。
冬彦さん的怪しさを、かっこいい俳優さんが演じたのが効果的でした。
美都の不倫相手の有島(役:鈴木伸之)とその妻、麗華(役:仲里依紗)も、俳優さん達が美都夫妻とバランスが取れていて、配役の妙を感じました。
麗華が、愛情いっぱいのやさしい笑顔で夫にひたすら感謝することで罪悪感をかきたて、巧みに不倫を自白させる場面、その後の手のひらを返した静かな激怒の表現が印象的でした。
また、涼太の同僚、小田原(役:山崎育三郎)が、実は涼太に思いを寄せるあまり、涼太を裏切って不幸にした美都と別れさせようと、自分の事情は言わずに、涼太と離婚したがる美都を手助けします。
そしてついに、美都に自分の報われない気持ちと美都へのいら立ちを吐露したら、いつの間にかやって来た涼太がそれを聞いてしまうという場面。
あれは一つの山場、見せ場でした。現代的な切ない場面でした。
まとめ
最後まで悪を貫いて罪悪感も皆無の美都。一貫して本当に不愉快な女でした。
まじめで地味でよくできた主婦、麗華が、クサい有島の謝罪行動にあっさり屈して不倫夫を許してしまったのが、ええ~それでいいの~~??と思ってしまいました。
最後、涼太が美都のことを吹っ切れて、美都のことは「それほど」と言ったのは良かったです。
涼太怖い!みたいな設定でしたが、愛する連れ合いに不倫されたら、そりゃあ狂いもするでしょう。涼太、全然おかしくないです。美都が悪い。
以前、フィクションの世界では、男性はたいした理由もなく不倫する設定だけど、女性が不倫する設定の時は、深い理由があってのことだ、という風に作品が作られている、というようなことを読んだことがあります。
ところが、『あなたのことはそれほど』では違います。ヒロインの女性は軽~く不倫します。
美都は自分の仕事もあるし、親と上司も不倫に理解があるし、子どももいないし、失うものがあまりなさそうです。
「一番好きな人と恋仲になって何が悪いの。」って感じです。葛藤もしません。
私の生活圏には現れてほしくないタイプです。
私の価値観では、不倫は罪、神様が見てる。ドラマの中では、「お天道様が見てる」と言ってましたが、それ以上です。不倫がおもしろいのはフィクションの世界だけです。