ベーシックインカムの社会実験が始まったフィンランドでは、1月9日に最初のベーシックインカムが口座に振り込まれました。
YLEニュースをチェックしてみると、ベーシックインカムの対象者がさっそく実名顔出しで詳しく報道されていたので、まとめてみました。
元記事はこちらです。
ベーシックインカムの詳細
2016年11月のフィンランドの失業者は、213,000人でした。
労働市場補助金と失業保険の受給者の中から、ベーシックインカムの社会実験の対象者として、2000人が選ばれました。
選ばれた人は、辞退することができません。強制参加です。
月額560ユーロを2年間支給、非課税です。
ベーシックインカム試行の目的は、ひも付きでない国の補助金を失業者が受給すると、雇用にどのように影響するかを検証することです。
ベーシックインカム実験の対象に選ばれたフィンランド人。その気になるプロフィールは?
基本的なプロフィール
ユハ・ヤルヴィネンさん。
男性。
西フィンランドのクリッカ在住。
妻は看護師として勤務。
子ども6人。一番上は15歳、一番下は5歳。
失業に至ったいきさつ
5年間失業しており、失業手当、社会扶助を受給していた。
それ以前は7年間自営業を営むも、倒産。
事業内容は装飾的な窓枠の製作。外国にも販路を広げようとしていた。
しかし、最後の方には何か月も無休で働き続けることになり、ついにはバーンアウトして倒産。信用格付けを失い、差し押さえにあってしまう。
ベーシックインカムになって受給額が減るのに、どうして喜ぶのか?
ベーシックインカムは、これまで受給していた失業手当よりも月額90ユーロ少ない額となります。
それでも、失業手当からベーシックインカムに変わって嬉しいと言うヤルヴィネンさん。
ベーシックインカムの方が自由なので、選択肢が増えたからです。
働いても減額されないので、躊躇なくパートタイムの仕事ができる
ベーシックインカムは、従来の社会保障とは違って「ひもなし」です。例えば、従来の労働市場補助金は、追加収入があれば減額されてしまいます。
なので、単発や短期間の仕事につく機会があっても、これまでだと罰のように失業手当が減額されてしまうので、働けないと感じていたそうです。
しかし、ベーシックインカムなら働いても減額されないので、心置きなくパートタイムの仕事ができると思っているそうです。
自営業に再びチャレンジできる
ベーシックインカムのおかげで普通の生活に戻れるでしょう。ベーシックインカムという後ろ盾があるので、自由にチャレンジできます。
というヤルヴィネンさん。
1月の終わりか2月のはじめには新たなビジネスを立ち上げる自信があるとのこと。
奴隷状態から逃れて、もう一度自分はちゃんとした市民だと思えるようになると言います。
ベーシックインカムでお役所仕事が減る
ヤルヴィネンさんが生活扶助を受給していた時、不合理なお役所仕事による無駄を体験したそうです。
家の暖房に薪ストーブを使用していたのですが、生活扶助では、暖房代として電気代は支給されるのですが、薪代は支給されません。そのため、わざわざ電気暖房に回帰したところ、かえって高くついたとか。
社会保険庁は、食料品、衣料品、公共交通費などの生活の基本的な必要のための費用を支給してくれるのですが、それに伴って、基礎社会扶助の金額が削減されるのです。
ベーシックインカムに反対する2つの考え
ニュース記事では、ベーシックインカムに対する次のような反対意見も紹介されています。
- ベーシックインカムは高額なので、受給者が他人のお金で生きるための許可を与えてしまう。
- 女性と社会的に疎外された人々が社会的に疎外されてしまうのに加えて、短期契約を制度化し、団体労働協約を弱体化する可能性がある。
まとめ
ベーシックインカムは自由をもたらし、生き方の幅を広げる
ヤルヴィネンさんは失業手当を受給しており、再び働きたいと思ってはいたものの、難しかったようです。
ところが、ベーシックインカムを受給することになって、再び起業して生活を立て直す希望が出てきて、実際にビジネスを始める模様です。
また、手当減額におびえつつ、いちいちお役所にお伺いを立ててお役所仕事の不合理さに苦労しながらなんとか生活を成り立たせる、という状態から抜け出すことができるということです。
生活を立て直して、再び社会人としての自信を取り戻せるのは、大きいことですね。
ベーシックインカムのデメリット
働かなくなる
居候先さえ見つければ、つまり家賃さえ払う必要がなければ、ベーシックインカムだけで暮らせてしまいます。そのため、働かなくなるということが心配されているようです。
でも、働いていなかったら見下されるし、発言力もないし、達成感も得にくく、自尊心を保つのがなかなか難しいので、働けるのにずっと働かないままで平気な人はそうそういないと思います。
働くのが難しいのに無理して働いていた人が引退できるようになるのは、いいことだと思います。
ベーシックインカムをたてに、雇用主が雇用の質を劣化させる
もともと不安定雇用になりがちな女性と社会的弱者の雇用がますます不安定になる。
雇用コストを減らすために不安定雇用が増えて、同じ職場で長く働き続ける人が減って、労働者が団結して会社と労働条件の向上のために交渉しにくくなる。
これはその通りだと思います。
「ベーシックインカムがあるから、低賃金・短期契約でいいや。」ってことになりそう。
求職者もそういう求人でも応募するようになって、クラウドソーシングみたいに単発・低賃金がはびこるようになったりして。
さあ、社会実験はどういう結果になるでしょうか。
引き続き、ヤルヴィネンさんを取材してほしいです。
ヤルヴィネンさんがブログ書いたら、すごい注目されそうですね。
フィンランド語で書かれたら、私は読めないですが・・・。
これまでの記事はこちらです。
ベーシックインカムで話題のフィンランド。社会保障がもはや持続不可能に?!
フィンランドで2017年から試行されるベーシックインカムの内容とは
フィンランド経済界の大物がベーシックインカムを支持する理由とは
フィンランドでベーシックインカム実験がついに開始!
ニュースで英語学習
記事に出てきた英語でちゃんと覚えておきたいものをまとめてみました。日本語訳はWeblioとGoogle翻訳を参照させていただきました。
get off the ground | うまくスタートする |
no-strings attached | 補助金などがひも付きでない |
in contrast to | と対照的に |
gig | 単発、短期間の仕事 |
suffer for | で罰せられる |
leave to~ | ~する許可 |
institutionalize | 制度化する |
collective labour agreements | 団体労働協約 |
exacerbating | 悪化させる |
social outcast | 日陰者 |
credit rating | 個人の信用貸し付け格付け |
foreclosure | 抵当流れ 差し押さえ |
he’ll have a new business up and running | 彼は新しいビジネスを立ち上げて稼働させるだろう |
enslavement | 奴隷状態 |
run up against | に強くぶつかる |
last-resort | 最後の手段、命の綱 |
revert to | 復帰する、先祖返りする |
ease up | ゆるむ、やわらぐ |
仮定法過去完了が出てきました。
If his home would have had a wood-burning stove in the sauna, he would have qualified for 50 euros in compensation.
もし彼の家のサウナに薪ストーブがあったとしたら、補償金として50ユーロの受給資格が生じたことでしょう。
* 内容は間違いがないように注意しておりますが、正確性は保証できません。元記事はこちらです。