Björn Wahlroos:銀行、保険会社、製紙会社の会長、自由主義経済の擁護者、高額納税者
ベーシックインカムを支持しているというBjörn Wahlroosとはどんな人物なのでしょうか。
フィンランド経済界の大物
1952年生まれのフィンランド人。
北欧最大手銀行Nordea、大手金融会社Sampoグループ、グローバル大手製紙会社UPM-Kymmeneの会長。
2014年フィンランド第4位の高額納税者。(http://www.iltasanomat.fi/verotiedot/による)
自由放任主義経済を支持。経済学博士。
租税回避疑惑
スウェーデンの税体系の方が好ましいという理由で、2013年にフィンランドからスウェーデンに引っ越し。
賃金が柔軟性に欠けていること、マーケットシェアの喪失、産業をむしばむ構造的な問題の数々がフィンランド経済を悪化させていると発言。
また、パナマ文書にNordeaが出ているけど、「何も悪いことはしていない」と言ったという報道もあります。
そんな経済界の大物が、なぜベーシックインカムを支持?
Björn Wahlroosは、2001年からベーシックインカムのアイデアを推進しています。
一体どういうわけなのか、YLEニュースとHELSINKI TIMESの記事をもとにまとめてみました。
Finland needs basic income and low-paid jobs, says Wahlroos
ロボット化、デジタル化、自動化、グローバル化によって、大多数が低賃金労働か失業かの2択を迫られる
ロボットが徐々に熟練労働にとって代わりつつある。
まもなく大多数のフィンランド住民は、低賃金労働か、失業かのいずれかの選択を迫られるだろう。
デジタル化された市場経済によって、中所得産業労働が欠乏し、低賃金職が増加する。
グローバリゼーションに適応すると、生活水準の大幅な低下を受け入れることになる。
企業は労働者の生活水準を維持するのに十分な給料を出せない
労働組合は「生活費をまかなうのに十分な賃金を維持すべき」と言うが、それはうるわしい理想にすぎない。
現在の最低賃金の水準では、将来的には完全雇用が達成できなくなる。
ワーキングプア層を生み出してはならない。ベーシックインカムが唯一の道。
労働市場を破壊することなく、収入レベルと幸福で健康な状態(well-being)を保証することが可能な社会を目指して発展していかなければならない。
「私たちは、新たなプロレタリアートが生み出されないように気を付けなければなりません。解決策は、包括的ベーシックインカムを導入することです。それと共に皆、ベーシックインカムを補うために仕事をすることができます。」とBjörn Wahlroosは述べた。
“We have to careful that a new proletariat isn’t born. The solution is to introduce a universal basic income, with everyone free to do work to supplement it,” he said.
Banker Wahlroos: Basic income only viable solution in face of massive job lossesBjörn Wahlroos, Finnish banking magnate and chairm...
ベーシックインカムが、フィンランドの企業と永住者に対する国の援助システムにとって代わるだろう。
ベーシックインカムをうまく設計したら、最低賃金以下の仕事でもやっていけるようになる。
フィンランド政府が社会実験で行う限定的ベーシックインカムは、設計に欠陥があるため、解決策にならない。
勝ち組と負け組どちらにとっても魅力ある国を
デジタル化の勝者と敗者双方にとって魅力的な生活状況を保証するために、製品開発の最先端にとどまれるよう、国には最善を尽くしてもらいたい。
勝者にとって魅力的な政策決定はまた、恵まれない人々にも思いやりのあるものであるべき。
政策立案者は、労働市場組織と距離を置くべき。
労働市場と社会全体に関する決定に対する拒否権を与えないためである。
労働市場組織は伝統的に、労働市場改革の大部分に反対してきた。
まとめ
Björn Wahlroosの主張のうち、状況分析である最初の2項目は日本でも同じです。
グローバル化とIT化で大多数が没落するだろう、企業が労働者の生活を保証することはできない、という点。
しかし、価値観、政策提言となる次の2項目については、日本の趨勢と大きく異なります。
低賃金、失業、生活水準の大幅な低下に関する考え方。
日本では個人の努力不足、自己責任といった観点から語られ、下層化は仕方ないと言われることが多い。
生活の保証は企業の責任ではないと考えつつも、国家が国民の生活レベルの維持に努めてくれ、という方向にはいきません。
一方でBjörn Wahlroosは、負け組の生活レベルも維持されるような社会を志向しているようです。
フィンランド経済が順調で財源が潤沢だから、というわけでは決してありません。
ベーシックインカムで話題のフィンランド。社会保障がもはや持続不可能に?!
European Commission: Finland’s economy among worst in EU | Yle Uutiset | yle.fi
にもかかわらず、国が社会実験を行うほどにベーシックインカムをまじめに検討する。
力の強い人がこういう考え方だからこそ、フィンランドは高福祉高負担の社会を実現してきたんでしょうね。
とはいえ、既存の社会保障の大部分がベーシックインカムに置きかえられたら、可処分所得が下がる可能性もありますよね。
今後どうなっていくのでしょうか。
フィンランドで来年から試行されるベーシックインカムの内容とは
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