森博嗣の幻想小説『赤目姫の潮解』の感想

赤目姫と緑目王子

森博嗣の『赤目姫の潮解』”Lady Scarlet Eyes and Her Deliquescence“は、「百年シリーズ」の第3作目、最終作です。

題名を見た時はどういう意味かまったくわからなかったのですが、読み終わってみると、なるほど題名のままに、赤目姫が潮解しました。

潮解(ちょうかい) deliquescence

固体を空気中に置いたとき,空気中の水分を固体が吸収して水溶液になる現象。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

森博嗣作品では、題名や章の題名の意味が最初見た時はさっぱりわからないけど、読み終わって振り返ると、なるほどそのままの内容だ!と感心することがよくあります。

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前2作『女王の百年密室』、『迷宮百年の睡魔』とかなり毛色が違う

前2作で主人公だったミチルと相棒のロイディが登場しません!

これがシリーズ最終作なので、もう二度と登場しないということになります。さみしい・・・。

前2作は明らかにSFだと思ったのですが、『赤目姫の潮解』は異なっています。

作者の森博嗣によると、

内容は、ファンタジィなのかSFなのか、よくわかりませんが、自分としては「幻想小説」のつもりです。

http://www001.upp.so-net.ne.jp/mori/myst/indexjpeg/M_R1.html

百年シリーズ」の最終作だと知らずに読めば、シリーズだと気付かなかったかも知れません。

『赤目姫の潮解』の特徴とおもしろさ

誰の語りなのかわからなくなる

森博嗣スカイ・クロラ』シリーズ、『四季 春』、『墜ちていく僕たち』とも共通することですが、一人称の話者が誰なのか、わからなくなります。

スカイ・クロラ』シリーズのある重要な章の題にあるように、”inverted“(逆になってる)なのです。

哲学とSFが潮解する

存在論の哲学的議論を夢の中で聞かされているような雰囲気があります。難解です。

後半で、「お、いよいよSFが始まったか」と思ったら、SF要素も幻想の世界に溶けていくかのようです。

妙に印象的だけど、どういう意味があるのかわからないモチーフの数々

森博嗣は、言葉ではなくイメージで物語を創作するそうなので、読み手としてはそのつもりで描写された情景を一生懸命に思い浮かべるわけですが、『赤目姫の潮解』を読む時には、よりいっそう頭の中でがんばって映像化する必要があります。

私は空間認知能力が低く、だいたい言語だけで思考するタイプなので、言葉で書かれた情景を頭でイメージするのが苦手で、実はその作業が大変です。

赤目姫の潮解』は漫画化されているので、読んでみたいです。よく漫画化できたなあと思います。漫画家のスズキユカ、すごい!

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それで、頭の中で映像化するととても印象的なモチーフが次々と登場するのですが、いっけん脈略がなく、不思議な雰囲気がただよいます。

視覚的におもしろい箇所があります。イラストや図ではありません。文字オンリーなのですが、遊び心があって楽しいです。

『赤目姫の潮解』の楽しみ方

赤目姫の潮解』は、一日で一気に読んで、「うわー、すごいおもしろかった!」という小説ではありませんでした。

一章ずつゆっくり読んで、映像作品を見るように頭の中で情景を思い浮かべて、視点の位置、移動を確かめる必要を感じました。

一度通して読んだら再び読み返して、頭の中でその世界を構築して、一週間ぐらいかけてじっくり楽しむのがよさそうです。

まとめ

赤目姫の潮解』は、ストーリー、物語の筋で楽しませてもらうものではなく、何が現実かわからない不思議な雰囲気、「自分」がずれる奇妙な感覚を楽しむものなのかな、と思いました。

森博嗣の作品はすごく幅が広くて、初期の「理系ミステリ」から、SF、幻想小説、やたらとコミカルなもの、エッセイ、絵本、と楽しみが尽きません。

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